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2040年の介護サービス


 4月7日、厚労省は「2040年に向けたサービス提供体制等のあり方」検討会(座長、野口晴子早稲田大学政治経済学術院教授)の中間とりまとめを公表した。2040年の介護サービスはどのような姿になるのだろう?検討会では以下の3つの地域ごとの特性に応じた介護サービスの提供体制を検討した。「中山間・人口減少地域」、「大都市部」、「一般都市等」。

 ここでは中山間・人口減少地域について見ていこう。中山間とは山地と平野の中間地帯のいわゆる里山地域だ。この地域の人口がすでに減少局面に入っている。また離島、半島も同様だ。こうした地域では高齢者人口も減り、介護サービスの需要減のため、介護サービス事業所は赤字だ。実際に中山間・離島等では介護サービス事業所の収支差(利益率)マイナスが目立つ。

 また半島の先端も同様だ。能登半島は2025年1月の能登地震に見舞われて以来、北部では若者が戻らず、急速な高齢化が進行化して、すでに「2040年」を先取りしている。離島も同様だ。離島ではすでに介護サービス事業者が撤退して、介護サービスの確保が困難となっている。このためやむを得ず人員基準を満たさないが特例として離島等に限った居宅介護サービスや地域密着型介護サービスを提供している。

 検討会ではこうし現状を踏まえて構成員から以下のような意見が相次いだ。「中山間地域でも、(離島と同じように)介護事業所の撤退が始まっており、介護報酬や人員基準、さらには補助金等の特例を設けて柔軟に対応しなければ立ち行かない」、「能登北部でも人員基準を思い切って柔軟化する特例を設けている」とした声が挙がった。今後、離島特例のような基準緩和を中山間地域や半島にも広げていくべきだろう。

 半島も実は離島と同じように、人口減が著しい。たとえば著者が勤務する衣笠病院グループは三浦半島の先端の横須賀市にある。横須賀市も人口減が急速に進んでいる。かつては40万以上あった人口も2040年には31万人を割り込む大激減だ。さらに三浦半島の先端にある三浦市の人口減も著しい。三浦市ではかつては5万人あった人口が、2040年には2万にまで落ち込む。このためタクシー運転手が減って、高齢者の足が奪われようとしている。このためいわゆる「白タク」であるライドシェアを認めるなど大幅な規制緩和が進んでいる。こうした規制緩和は介護分野でもこれから必須だ。

 さてこうした2040年の人口減に対する介護サービスの提供体制はいかにあるべきか?そのキーワードは以下の4つだ。規制緩和、地域密着、多機能複合型、連携だ。大幅な規制緩和で人員基準等を緩和する。身近な市町村の地域密着事業で対応する、通所、宿泊、訪問など機能の複合化、そして介護福祉施設の連携とそれを一歩進めた社会福祉地域連携推進法人だ。

 

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