エッセーの投稿

聖書と医者


 聖書に登場する医者と言えば、なんと言ってもルカだ。ルカは新約聖書の「ルカによる福音書」と「使徒言行録」の執筆者で、使徒パウロの宣教旅行にも同行したという。聖書の中のスーパー医者として有名だ。ルカはユダヤ人ではなく異邦人だっとされている。その文章は医者らしく観察眼にすぐれていて、こまやかだ。

 ルカは病状の描写がとっても具体的だ。たとえば、ペテロのしゅうとめが「高熱で苦しんでいた」とか、癒された人の「右手がなえていた」など、部位や症状まで記録している。これは医師ならではの観察力だ。

 この他、イエスが「病人一人一人に手を置いて癒された」(ルカ4:40)という記述から、ルカはイエスの行動に「個別ケア」の精神を見ていたようだ。現代の医療でも大切な「患者中心のケア」だ。またイエスが手を置いて癒す場面では、触れることの安心感や信頼感が強調されている。これは医療現場でも「非言語的コミュニケーション」として知られている。

 最近の医者はあまり患者の体に触れない。しかし身体所見を得るには見て、聞いて、触ってみることが大事だ。それと同時にこうした医者の診察行為は一種の患者とのコミュニケーションでもある。著者は外来診療でもかならず心音と肺音を聴診器で聞くのを習慣にしている。もちろん診察が目的だが、聴診は患者との距離が実際にぐっと近くなるので、非言語的コミュニケーションの一種でもある。

またルカには、イエスの癒しの行為から、「全人的医療」や「行動指針」を導き出していて、医療従事者の規範としてのイエスを描いている。まさに医師の視点からの神学的アプローチだ。

 そしてルカは記述の冒頭で「すべての事を初めから詳しく調べていますので…順序正しく書きつづって」と宣言している。まるで症例報告みたいな構成で、ルカの記述は医学的な記録精神がいかんなく発揮されている。

 ルカの福音書は、医学と信仰がやさしく溶け合ってる感じがして、読んでると心がじんわり温まってくる。

エッセーの更新履歴

最新10件