
おかしな副作用をもつクスリがある。外来で糖尿病の女性の患者さんが、ボグリボースを飲むとおならがしきりに出るので、飲みたくないという。ボグリボース(α-グルコシダーゼ阻害薬)は食後の高血糖を抑えるためよく出すクスリだ。ボグリボースは小腸で糖の分解をゆっくりにする薬だ。このため食後に急に糖が小腸から吸収されて血糖値が上昇するのを抑えてくれる。
だけれどその分解されなかった糖が大腸まで届いてしまう。すると、大腸の腸内細菌たちが待ってましたとばかりにその糖を分解発酵させて、ガスをたくさん作りだし、おならが増えるというワケだ。「おならがでるのはクスリが効いている証拠ですよ」といっても、女性の場合は「恥ずかしいからイヤ」といって飲んでくれない。
クスリで味覚障害の副作用をもつクスリもある。クスリをのんだら味がおかしくなったという訴えだ。これはピロリ菌を除菌するため使うボノサップで時々起きる。ボノサップは、3剤配合製剤で、アモキシシリン、クラリスロマイシンなどの抗菌薬と、胃酸分泌を抑えるランソプラゾールが含まれている。
この中で、味覚異常の副作用が報告されているのは主にクラリスロマイシンだ。クラリスロマイシンはマクロライド系抗菌薬で、舌で味を感じる味蕾に直接影響を与えることで、味覚の変化や鈍化が起きる。たいていは一過性でボノサップを1週間飲んでいる間だけのことだ。またボノサップの抗菌薬で腸内細菌に変化を起きて下痢を起こすこともある。便秘がちの人がボノサップのおかげで便秘が良くなったという人もいる。
子どものころ風邪薬をのんだら、なぜか自分の背が急に大きくなって手足が小さく見えるような気がした。物が実際より「大きく見えたり(マクロプシア)」、「小さく見えたり(ミクロプシア)」する現象は、「不思議の国のアリス症候群(Alice in Wonderland Syndrome,:AIWS)」と呼ばれている。
ルイス・キャロルは「不思議の国のアリス」のなかで、アリスがクスリを飲むと、急に背が伸びだり、ちじんだりする場面を描いている。これにちなんでつけられた名前だ。抗てんかん薬や抗ウイルス薬でおきるという。クスリが大脳の空間認識を行う領域に影響を与えるからだと言われている。特に子供に起きやすい。ルイス・キャロルは元々数学者だが、薬の副作用にも精通していたようだ。
