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Ars longa Vita brevis


 これは医聖ヒポクラテス(Hippocrates)の『箴言』に由来する有名な一句だ。 原文はギリシア語だが、後にこのラテン語で広まった。

 Ars longa, vita brevis(アルスロンガ・ビタブレイビス)とは、「医のワザは長く、人生は短い」と言う意味だ。そして「機会は逃げやすく、経験は誤りやすく、判断は難しい」と続く。

 ヒポクラテスは古代ギリシアのコス島で、紀元前460年~370年ごろに活躍した医者だ。しかしその言葉はとても2400年も前の言葉とは思えない。今の医療に通じている。「機会は逃げやすく」とは、学びのための機会はあっという間に手のすきまから逃げてしまう。気づいたときにはその機会は二度ともどってこない。また「経験は誤りやすい」とは、今でいう「経験則に基づく医療(Empirical Medicine)」の諫めだ。狭い経験から判断してはいけない。科学的なエビデンスにもとづいて判断しなければならない。

 しかしそのわずかで狭い経験をつむのにも時間がかかる。様々な患者を診て経験とワザを積み重ねるには時間を要する。あっという間に年を取ってしまう。

 これは別に医療に限ったことではない。すべての学芸(アート)に通じている。学ぶべきことは果てしなく続く。しかし人間の寿命は短い。だからこそ「時をよりよく用いよ」という至言が生まれる。

 「少年老いやすく学なりがたし」だ。

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