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おもしろ薬辞典㉓ 自白剤


 ジェームス・ボンドの007シリーズでは、ときどき自白剤が登場する。映画に出てくる自白剤は「どんな秘密でもすべてペラペラと嘘偽りなく喋ってしまう魔法の薬」だ。映画を見ながら「どんな薬だろう」と思っていた。

 映画でつかわれる薬の多くは、医学的には麻酔薬や睡眠薬だ。代表的なものはチオペンタールナトリウム(Sodium Thiopental)やアミタール(Amobarbital )で、超短時間作用型のバルビツール酸系麻酔薬だ。点滴で投与されると、お酒にひどく酔ったような状態(酩酊状態)になり、前頭葉の抑制がとれて尋問に対してペラペラと話してしまうという。これらの薬が「自白剤」と呼ばれる理由は、脳の機能を一時的に麻痺させるメカニズムがあるからだ。

 チオペンタールなどは麻酔の導入剤としてよく使われる。このため麻酔をかけられる直前に、「普段なら絶対に隠しておくような本音や、恥ずかしい秘密をペラペラと喋ってしまう」と、麻酔の研修のとき先輩から聞かされてびっくりした。実際に麻酔の研修中にそんなことには1度も出会わなかった。今ではこれは先輩のジョークめかした「都市伝説」だと思っている。

 でもたとえチオペンタールでうわごとを言っても客観的な証拠とはならないのでご安心を。薬によって思考力や記憶力が低下しているため、「本人が本当だと思い込んでいる勘違い」であることが多い。このため自白剤としてチオペンタールを使って得られて自白は「本人の勘違い」や「尋問者が望む答えを適当に合わせて作った嘘」をペラペラと喋ってしまう可能性が非常に高い。このため、現在では多くの国で、薬物を用いて得た自白は「拷問や強制による自白」と同様に、法的証拠能力が完全に否定されている。

 このため自白剤による自白は裁判では証拠として使えない。

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