
今日の外来で横須賀共済病院から船舶の石綿(アスベスト)が原因でじん肺になった患者さんが紹介されてきた。80歳の高齢男性だ。住友重機械工業に長く務めていて、造船所で船舶のエンジンの修理工として働いていたという。エンジンルームの騒音環境の中で長年働いていたので、難聴もある。大声で話さないと聴こえない。
石綿(アスベスト)は、かつて船舶には広く使用されていた。船舶のエンジンルームやボイラー周辺の断熱材で広く使われていた。石綿は腐食しにくく船舶の配管のパッキンや防音材としてもよく使われていた。
しかし1982年、横須賀共済病院の研究チームが、米軍基地や造船関係の労働者に石綿肺がんが多発していることを報告した。その後、1999年に基地退職者20名が防衛施設庁に対し、日米地位協定に基づく補償請求を行ったが、時効を理由に棄却された。これを不服とした16名が、1999年7月に横浜地裁横須賀支部に損害賠償を求める裁判を起こした。
この裁判は、日本で初めて国を被告とする米軍基地のじん肺訴訟であり、じん肺根絶を目指す上で重要な意義のある裁判だった。いまでは船舶にはアスベストは使われていない。
先の患者さんは、横須賀共済病院に通っていたが、高齢になって通院が大変になったことから自宅近くの衣笠病院に転院してきた。これからこの患者さんは衣笠病院の私の外来で吸入薬を処方しながら、経過を見ていくことになった。
