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エニシダの木


 衣笠病院の今朝の礼拝で、赤松牧師が選んだのは列王記上19章4~5節だ。預言者エリヤがイゼベルの怒りを逃れて荒野に逃げ、エニシダの木の下で「死を願いながら眠る」場面だ。

 預言者エリヤは、干ばつの預言をしたことでアハブ王の妃イゼベルに憎まれ、命を狙われ、荒野へ逃げる。彼は絶望の中、エニシダの木の下で「もう十分です。主よ、私の命を取ってください」と祈るほどに疲れ果てていた。

 そのとき、神の使いが現れ、エリヤにこう語ります。「起きて食べなさい」。見ると、焼き石の上に焼けたパンと水の瓶が置かれていた。エリヤはそれを食べて再び眠り、もう一度起こされて食べる。こうして彼は40日40夜、神の山ホレブへと歩み続ける力を得ることができたのだ。

 エニシダの木(ヘブライ語で「ローテム」)は、聖書に何度か登場する砂漠の低木で、地中海沿岸のヨーロッパ及びアフリカ各地を原産とするマメ科エニシダ属の木だ。

 このエニシダの木の名前をとった衣笠病院のホスピスの催しがある。患者さんが好きな料理を希望して食事をする会だ。患者さんのリクエストに応じて管理栄養士がファミリーキッチンにて手作りしている。そしてホスピス病棟の庭にはエニシダの木が植えられている。エニシダの木には春になると黄色い花が咲いて、患者さんやご家族の心を和ませてくれる。

 食事は時として古い記憶を呼び起こしてくれる。だれにも心に残る人と一緒に共にした食事の思い出が必ずあるはずだ。こうした思い出の食事を再現してくれるエニシダの木の会は今やホスピスにはなくてはならない行事になっている。