エッセーの投稿

カール・ポランニー


 カール・ポランニー (Karl Polanyi 1886-1964)は、ハンガリー生まれで、第二次世界大戦後にアメリカで活躍した経済思想家だ。

 ポランニーと新自由主義の関係は、現代経済思想を批判的に見つめるうえで非常に重要なテーマだ。ポランニーの代表作「大転換(The Great Transformation)」は、1944年に発表されたにもかかわらず、1980年代以降の新自由主義の台頭に対する鋭い批判として再評価されている。大転換とは共同体的経済から自己調整的市場経済への移行のことで、その過程で社会がどのように変容し、危機に陥ったかを描いている。

 『大転換 新訳 市場社会の形成と崩壊』は、日本語新訳版で、2009年に東洋経済新報社から出版された。この本は、単なる経済書ではなく、文明史・社会哲学・政治経済学を横断し、現在にも通じる課題を投げかけている。以下に、主要なテーマを見ていこう。

1. 自己調整的市場の幻想

 ポランニーは、近代経済学が理想とする「自己調整的市場(self-regulating market)」をユートピア的幻想だと批判する。市場がすべてを調整するという考えは、実際には社会や自然に壊滅的な影響を与えると主張する。

2. 擬制商品(Fictitious Commodities)

 労働・土地・貨幣は本来商品ではないのに、市場に組み込まれることで「擬制商品」となる。これらを商品化することは、人間(労働)、自然(土地)、社会制度(貨幣)を破壊する危険性をはらんでいる。

3. 二重運動(Double Movement)

 市場の自由化が進むと、それに対抗して社会は保護を求める動きが起きる。この「二重運動」は、自由市場と社会的保護の間のせめぎ合いを描いた概念だ。

4. 社会と経済の不可分性

 ポランニーは、「社会」と「市場経済」を分離するという近代経済学の前提を否定する。というのは経済は常に社会の中に埋め込まれており、社会的文脈なしには機能しないと説く。

5. 市場経済の歴史的形成と崩壊

 「大転換」は、19世紀のイギリスを中心に、市場経済がどのように形成され、崩壊へ向かったかを歴史的に分析している。特に金本位制の崩壊や国家間のパワーバランスの変化が「大転換」の契機となったとしている。

 本書は、グローバル資本主義や新自由主義が直面する問題を根源的に問い直す視点を提供している。リーマン・ショック以降、ポランニーの思想は再評価され、社会的連帯や持続可能性を考えるうえでの重要な指針となっている。

 ポランニーの語りに耳を傾けよう。