
血中のコレステロールを下げる薬としてスタチンが良く使われている。このスタチンの開発に日本人が大きく係わっている。発見したのは遠藤章博士(写真)だ。遠藤章博士は1933年に秋田県生まれだ。東北大学農学部を卒業後、農学博士となる。そして三共株式会社(現・第一三共)で研究員として勤務していた。
遠藤章博士は、三共株式会社でコレステロールを下げる新しい薬を探していた。彼が注目したのは、細菌由来の抗生物質のような化学物質だ。「カビや細菌が作る物質の中に、コレステロール合成を阻害する化学物質があるのでは?」と考えた。そしてついに1973年にペニシリウム・シトリナムというカビからメバスタチンというコレステロール合成酵素(HMG-CoA還元酵素)を阻害する物質を発見した。
これが今日のスタチン系薬の原型となった。まさに画期的な発見だった。でもその後、メバスタチンは動物実験で副作用が見つかり、三共株式会社は開発を中止してしまう。しかしアメリカのメルク社が、遠藤博士の研究に注目し、独自にスタチン系物質を探索し、アスペルギルス属のカビからロバスタチンを発見した。
ロバスタチンは、構造的にもメバスタチンに非常によく似ていて、より安全性が高く、臨床応用に適した化合物だった。こうしてロバスタチンが世界初のスタチン薬として承認され、世界的なベストセラーとなる。
遠藤博士はこの功績から2008年に米国のノーベル賞ともいわれるラスカー賞を受賞する。でも彼は、名誉よりも「自然への感謝」を語り続けた。「私は、自然からの贈り物を見つけただけです。」と述べている。
遠藤博士は2024年に90歳でお亡くなりになられた。
