
横須賀市にある衣笠病院で週2回外来を担当している。外来に来られる方は多くは高齢者だが、ときどき若い学生も受診する。たいてい母親に連れられてやってくる。
先日も腹痛と下痢を訴える高校一年生の男子がやってきた。中学のころから食後の腹痛と下痢症状に悩まされているという。中学のころには過敏性腸症候群と診断されたこともあるという。「ポリフルを使ったことはある?」と聞いたら「ない」とのことなので、早速使ってみることにした。
ポリフル(ポリカルボフィルカルシウム)が、過敏性腸症候群(IBS)によく効く。治験では60~70%の患者に効くという。ポリフルのメカニズムが面白い。ポリフルは胃の酸性環境でカルシウムが外れてポリカルボフィルという高吸水性ポリマーになり、腸の中性環境で吸水・膨潤・ゲル化する。これにより、腸内の水分バランスを調整する力を発揮する。下痢のときは余分な水分を吸収して便を固める。一方、便秘のときは水分を保持して便を柔らかくする。この両刀使いがポリフルの最大の特徴だ。
ポリフルは以前、国際医療福祉大学の栃木の本校のクリニックで外来をしていたとき、よく過敏性腸症候群の学生に処方した。そのころからよく効くという印象があった。それで今回もポリフィルを処方してみた。1か月後の再診時に高校生に聞いてみた。すると「ポリフルで下痢が収まった」という。「まだ食後の腹痛は残っているが、下痢が治まっただけでもよかった」という。やっぱりポリフルは効くのだ。
ポリフルは腸から吸収されるわけでもないので、副作用もない。このためポリフルのスイッチOTC化の申請が2017年に出されていた。これが2019年7月にスイッチOTC化を検討する厚労省の「医療用から要指導・一般用への転用に関する評価検討会議」で、スイッチOTC化のOKがでた。ただ条件は「以前に医師の診断・治療を受けた人に限ること」になった。
これでまもなくポリフルのスイッチOTC、「ポリフルS」が販売されるだろう。さきの高校生にも「あとは薬局でポリフルSを買ってね」と言えるようになる。
