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ミレーの晩鐘


 今朝の衣笠病院の朝の礼拝で、ミレーの「晩鐘(ばんしょう)」が話題に取り上げられた。何度見ても心に残るミレーの傑作だ。絵ではアンジェリカの鐘に祈っている農夫の夫婦が描かれている。

「晩鐘」は、フランスの画家、ジャン・フランソワ・ミレー(Jean-François Millet)が1857年から1859年にかけて描いた代表作のひとつだ。フランスの農村を舞台に、夕暮れ時に祈りを捧げる農夫とその妻の姿を描いている。アンジェリカの鐘とは、カトリック教会で朝6時、正午、夕6時に鳴らされる鐘で、その音を聞いた信者はその場で祈りを捧げる。

 この絵の背景には、ミレー自身の農民としての出自と、彼の深い宗教的感性が色濃く反映されている。彼はノルマンディー地方の農家に生まれ、農民の労働と信仰を生涯にわたって描き続けた。

 また、この絵はミレーの亡き母への追悼の意を込めて描かれたとも伝えられている。ミレーは子どもの頃、母親と一緒に畑で働いているとき、母が教会の鐘が鳴ると手を止めて祈りを捧げる姿を見ていた。その子供の時の記憶が、彼の心に深く刻まれていて、「晩鐘」という絵に結実した。

 そして、この絵には農夫の夫婦の愛も感じられる。夫婦の姿には、言葉を交わさなくても通じ合う深い絆が感じられる。一日の終わりに、疲れた体を休めながら、教会の鐘の音を聞きながら、同じ祈りを捧げる…。これ以上の愛はないだろう。聖書に出てくる「愛」とは派手な言葉や行動ではなく、こういう日常の積み重ねの中に染み込んでいるものなのだろう。