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三丁目の夕日


 2024年の出生数が70万人を割り込んだ

 著者は1949年生まれの団塊世代だ。当時の出生数は年間270万人で今より4倍近くも子供が生まれていた。合計特殊出生率も4.32を記録している。著者は神奈川県川崎市の下町生まれだ。当時、町の路地にはどこから湧いて出てくるのかと思うくらいのたくさんの子供であふれていた。小学校に上がっても教室が足りなくてプレハブ造りの仮設教室に詰め込まれた。それでも足りずに1つの教室を午前午後の2回転させて使っていた。

 学校から帰れば、近所の路地で大勢の子供たちと遊んだ。メンコ、ベーゴマ、ビー玉、馬乗り、時々やってくる紙芝居の周りに輪を作っていた。当時の路地にはいろいろな子供がいた。知恵遅れの子供もいたし、今では見ることのないクル病で背むしの子供もいた。いつも鼻を垂らしている子もいた。いじめっ子もいれば泣き虫の子もいた。でもみんなそんなことはお構いなしに一緒に遊んでいた。子供たちの世界は多様性に満ちていて、放課後の路地の中で、すべてを学んでいたような気がする。

 さてこうした昭和の時代を雰囲気を伝える映画が「Always 三丁目の夕日」(山崎貴監督)だ。建設中の東京タワーが見える東京の下町の物語だ。東京タワーは1958年に完成する。著者も小学生のころ3分の1ほど出来上がった東京タワーを見たことがある。当時、目黒に住んでいた叔母さんの家に遊びに行ったときで、また東京タワーが建設途中だった。このころはまだ高層ビルもなかったので、目黒から芝公園の建設中の東京タワーを見ることができた。大空を目指して立ち上がっていく東京タワーがとても大きく見えて、心躍らせたものだ。

 子供があふれるようにいた昭和は、今やモノクロの映像のかなたに消え去った。いま日本を襲っているのは恐るべき少子化時代だ。

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