エッセーの投稿

医者ルカ


 聖書に登場する医者と言えば、なんと言ってもルカだ。ルカは新約聖書の「ルカによる福音書」と「使徒言行録」の執筆者で、使徒パウロの宣教旅行にも同行した。ルカはユダヤ人ではなく異邦人だったとされている。ルカが医者だったことは、「愛する医者ルカとデマスが、あなたがたによろしくと言っています。」(コロサイ 4:14)というパウロの言葉に現れている。

 ルカによる福音書におけるイエスの癒しの奇跡やけが人の手当の記述は、少なくとも14か所以上確認されていて、聖書の中で最も数が多い。以下は代表的な癒しの場面だ。

シモンの姑の熱病を癒す(ルカ4:38–39)、重い皮膚病の人を癒す(ルカ5:12–16)、中風の人を癒す(ルカ5:17–26)、片手の萎えた人を安息日に癒す(ルカ6:6–10)、百人隊長の僕(しもべ)を遠隔で癒す(ルカ7:1–10)、ナインのやもめの息子を生き返らせる(ルカ7:11–17)、ゲラサの悪霊に取り憑かれた男を癒す(ルカ8:26–39)、出血を患う女を癒す(ルカ8:43–48)、ヤイロの娘を生き返らせる(ルカ8:49–56)、18年間病の霊に縛られていた女を癒す(ルカ13:10–17)、水腫を患う人を安息日に癒す(ルカ14:1–6)、十人のらい病人を癒す(ルカ17:11–19)、エリコの盲人を癒す(ルカ18:35–43)、ゲツセマネで耳を切られた大祭司の僕を癒す(ルカ22:50–51:)。

 その文章は医者らしく観察眼にすぐれていて、こまやかだ。ルカは病状の描写がとっても具体的だ。たとえば、ペテロのしゅうとめが「高熱で苦しんでいた」とか、癒された人の「右手がなえていた」など、部位や症状まで記録している。これは医師ならではの観察力だ。

 この他、イエスが「病人一人一人に手を置いて癒された」(ルカ4:40)という記述から、ルカはイエスの行動に「個別ケア」の精神を見ていたようだ。現代の医療でも大切な「患者中心のケア」だ。またイエスが手を置いて癒す場面では、触れることの安心感や信頼感が強調されてる。これは医療現場でも「非言語的コミュニケーション」として知られている。

 またルカには、イエスの癒しの行為から、「全人的医療」などの「医師の行動指針」を導き出していて、医療従事者の規範としても役に立つ。聖書のなかのスーパー医師だ。