
横須賀市にある衣笠で訪問診療を週1回行っている。訪問診療先にはグループホームも多い。訪問するとお年寄りたちがリビングに集まってテレビを見ている。「訪問診療に来ました」と声を掛けると、職員が入居者の一人を車いすに乗せて個室まで一緒に案内してくれる。個室には子供や孫やご本人の思い出の写真などが飾ってある。グループホームは9つの個室と中央のリビングからなるユニット型の設計だ。このユニット型の建築設計を発案したのが外山義(とやまただし)さんだ。
外山さんと私は30年も前、同じ職場で働いていたことがある。東京の新宿にあった国立医療・病院管理研究所で一緒だった。当時、新米の研究部長として赴任した私を助けてくれたのが外山さんだ。外山さんは建築家で、スウェーデンの留学から日本に帰国して、高齢者施設の研究を行っていた。外山さんのお父さんは牧師さんで、外山さんも敬虔なクリスチャンだった。外山さんと私は年が近かったこともあり、研究所ではよく一緒に話をしたり、研究も一緒に行った。
そうした外山さんのライフワークがスウェーデンの高齢者施設から学んだ、ユニット型の建築だ。ユニット型の設計は、現在の日本のグループホームや特養や老健に活かされている。この設計は、外山さんの以下の研究結果から提唱された。それは高齢者施設の大部屋のお年寄りを観察すると、大部屋ではお互いンプライバシーを気にして積極的に会話をすることがない。そして各自が自分のスペースに引きこもるようになる。ところが個室化すると、共有のリビングスペースに入居者が集まり、相部屋よりも入居者のコミュニケーションが活発になる。
この研究結果が厚労省を動かし、現在のユニット型のグループホームや特養、老健の基準に繋がった。著者が勤務する衣笠病院グループの特養である衣笠ホームも、2003年に移転新築したとき神奈川県初の「ユニット型」を導入したことで話題となった。しかしその時には外山さんはすでにこの世を去っていなかった。2002年になんと52歳の若さで亡くなる。
ときどき衣笠ホームを訪れると、外山さんが生きていれば、この衣笠ホームのユニット型のホームを案内できたのにと思う。けれど衣笠ホームのユニット型の設計にはいまでも外山さんの目指した理念を感じることができる。建築家として、また敬虔なクリスチャンとしての外山さんの温かい眼差しを感じることができる。
