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日本から病院が消える日


 コロナ補助金が剝ぎ取られた病院の経営が文字通り危機的だ。患者数がコロナ以前に戻らない。また医薬品や材料費の高騰、給与引き上げなどのコスト圧力が尋常ではない。病院はこのコスト増を患者に転嫁できない。このため赤字病院が続出している。

 2025年は改定年ではないので、診療報酬が上がることもない。このままの状態が続けば、来年の今頃は赤字病院は危機的レベルになっているだろう。そもそも診療報酬改定はインフレを想定していない。「インフレ率に対応した診療報酬改定の仕組みが必要だ」と言う声さえ聞こえる。消費税値上げ改定のようにインフレ率を上乗せした改定率だ。消費税改定の時のように入院基本料や外来基本料に上乗せするという方法だ。

 しかしそんなことはあり得ない。まず財源がない。昨年はプラス0.88%の本体部分のアップだったが、インフレ率には到底及ばない。この本体改定アップも薬価のマイナス改定でかろうじて達成した。しかし薬価も打ち出の小槌のようにいつまでも財源をたたき出してくれるわけではない。あまりの低薬価で医薬品供給の不安が2021年から足掛け5年も続いている。

 ただ、次なる診療報酬の原資となる財源もやはり薬だ。今度はOTC類似薬が狙われている。OTC類似薬とは一般用医薬品(OTC)があるが、同時に処方薬でもあるという薬のカテゴリーだ。こうしたOTC類似薬は7000品目もある。このOTC類似薬の保険給付範囲を狭めることでかなりの財源が浮く。もはや「PL顆粒やシップ薬は処方できません、薬局で買ってください」ということになる。

 あとは若者が減って急性期医療ニーズの減少にともなう急性期医療の集約などの病床改革、医療DXによる医療の効率化による医療費削減などを地道に行って、その浮いた分を診療報酬の本体部分に回すほかないだろう。魔法の杖などどこにもない。

 1990年に1万を超えていた病院数は今や8千を割る日も近い。35年で2千ちかくも減少した。病院はこれから減る一方だ。現下の病院経営危機がそのあと押しをするのは確実だ。病院が消える日も近い。

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