エッセーの投稿

風が吹く


 高校生の時の英語の教科書クラウンに載っていたキャサリーン・マンスフィールドの「風が吹く(the Wind blows)」が好きだった。その短編は以下の冒頭のシーンから始まる。

“Suddenly—dreadfully—she wakes up. What has happened? Something dreadful has happened. No—nothing has happened. It is only the wind shaking the house, rattling the windows, banging a piece of iron on the roof and making her bed tremble.”

 この映画のような冒頭のシーから、風の力強さと主人公の繊細な感情が鮮やかに伝わってくる。

 物語はある風の強い日の少女の日常を写し取っている。。そのなかに弟と思われる少年と雨の降る岸辺に立って、沖を過ぎていく船を見つめるシーンもある。このシーンも映画のワンシーンのように何とも詩的な情景だ。

 キャサリン・マンスフィールドは1888年、ニュージーランドのウェリントンの裕福な家庭に生まれた。子供のころから創作に親しみ、9歳で初めて短編を出版する。その後、ロンドンのQueen’s Collegeに留学するなど、文学への道を進むが、ニュージーランドには戻らず、生涯イギリスで暮らした。

 彼女のイギリスでの生活は創作活動の中心だったが、困難も多かった。社交的な文化人との交流は作家としての成長を支えた。しかし、健康面での苦しみや弟の死など、多くの悲しみが彼女の人生や作品に影響を与えた。

キャサリン・マンスフィールドの弟、レスリー・ハーンドン・ボウチャンプは、彼女にとってとても特別な存在だった。しかし彼は1915年、第一次世界大戦中の訓練中に亡くなってしまう。弟の死はキャサリンに深い影響を与え、彼女の作品におけるテーマや感情の表現に反映されている。冒頭の沖を行く船を見つめるシーンもニュージーランドでの弟との思いでだろう。

 キャサリン・マンスフィールドの「風が吹く」という短編に、英語の教科書で出会ったのは幸運だった。その後、マンスフィールドの短編集や伝記を読んで、ますます「風が吹く」を好きになった。