
エチゾラムは、抗不安、筋弛緩、抗けいれん、催眠作用でよく用いられる薬だ。商品名はデパスで、「お薬のみ外来」で定番の薬の一つだ。30日の処方制限のため、お薬のみ外来でよく処方する。
エチゾラムは、1970年代に日本の吉富製薬(現在の田辺三菱製薬)によって開発された薬だ。開発当時、これまでのベンゾジアゼピン系薬(ジアゼパムなど)に代わる、より安全で速効性のある抗不安薬として登場した。エチゾラムは、ベンゾジアゼピンに似ているけど、ベンゼン環の一部がチオフェン環に置き換わっているのが特徴だ。この構造の違いが、速効性と短時間作用、そして比較的軽い筋弛緩作用をもたらしていると言われている。
ところがエチゾラムが広く使われているのは日本やインド、イタリアなどの一部の国だ。エチゾラムは欧米では承認されていないので、使われていない。承認されない理由は、依存性や乱用のリスクが懸念されていること、他のベンゾジアゼピン系薬で代用可能と判断されていること、長期使用による安全性データが不十分とされているからだ。
でも近年、欧米でも「リサーチケミカル」として注目され、逆輸入されるような形で話題になった。リサーチケミカルとは未承認であるが、研究目的で使用される薬のことだ。そのせいで、一部の国では規制薬物として扱われるようになった。ということで、エチゾラムは、日本で開発されたとはいえ、ちょっと波乱の運命をたどった薬となった。
たしかに日本でも、外来に貼ってある「ストップ・ザ・ベンゾジアゼピン」のポスターをみながら、すこしざわつく心でエチゾラムを処方するといういわくつきの「薬」になっている。
