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へバーデン結節


 今日の外来で、患者さんとへバーデン結節自慢になった。50歳代の女性が、足がむくんでいるといって来院された。でも足はむくんでいない。歩きすぎで痛みもあるという。そのうちに手指も痛いという。見せてもらった手の小指の変形が目に留まった。へバーデン結節だ。ご本人もなぜか「これへバーデン結節ですよね」と言う。「よく知っていますね」というと、ネットで調べたという。「私もへバーデン結節がありますよ」といって右手の小指を見せた。 

 へバーデン結節は小指の遠位指節間(DIP)関節にできる変形性関節症だ。二人でどっちの小指がより曲がっているか比べてみた。女性のほうが曲がりが強かった。「いや~私のほうが負けました」と言った。へバーデン結節は女性のほうが多く、変形も高度だ。またヘバーデン結節は遺伝性が強く、 母娘で同じ指の同じ DIP が腫れる という現象がしばしば見られる。臨床家の間では「Heberden は遺伝の教科書」 と呼ばれることもあるほどだ。

 へバーデン結節を記述した William Heberden(1710–1801) は、ロンドン出身の内科医で、もともと狭心症を初めて記述するなど、心臓の医者だった。たまたまへバーデン結節を最初に詳細に記述したので、その名前が付いた。本来は心臓の人として記憶されるべきへバーデンだが、なぜか、いまでは指の人として記憶されている。へバーデンにとっても不本意だろう。

 それにしても先の女性は何のために外来に来たのだろう?著者とへバーデン結節比べをして、そのまま帰って行った。不思議な患者さんだ。

 

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