
2018年8月下旬、夏休みを利用してオランダのアムステルダム郊外のケアファームを訪問した。アムステルダム市内から車で約1時間、ヘッケルドルフ村の「ブーラ農園」に併設された認知症デイサービスだ。農園には牛やヤギ、鶏、自家製の野菜畑やハーブガーデンがある。農園の一角に併設されたケアファームだ。
このケアファームを始めたのは看護師のコリーさん(写真左から3人目)、ご主人はブーラ農園のオーナーをしている。コリーさんが2010年にご主人と一緒に農園の一角に認知症デイサービスを立ち上げた。動機はもともとコリーさんが認知症の介護経験を持っていたこと、農園の中で、認知症の方のケアをしてみたいと思ったからだ。
ブーラ農園を訪れたときは5名の認知症の方がリビングでコーヒーを飲みながらくつろいでいた。いつもは8名ぐらいの方が訪れるが、この日は入院した方もいたので少ないとのことだった。
デイサービスのプログラムは以下である。近所のボランテイアの方の送迎で、9時ごろ利用者の皆さんは農園に到着する。そしてコーヒーを飲み、新聞の話題などを話す。10時から散歩、スポーツ、農作業など思い思いに時を過ごす。11時半から昼食準備を利用者さんも参加して行う。ハーブガーデンから摘んできたハーブを刻んだり、ジャガイモの皮をむいたりする。ランチをみんなでとって午後1時半から食器洗いやお昼寝の時間、2時半からお絵かきやクラフト、畑仕事や庭仕事、音楽やときには遠足もするという。デイサービスのリビングには犬や猫も出入りし、敷地の中には、牛の飼育場、ヤギ、鶏もいて、動物たちと身近に接すすることができる。オランダののどかな農園の一角のケアファームだ。
コリーさんによればケアファームの良いところは以下だ。「それぞれの利用者が役割を持てること」、そして「野外の活動で症状が安定し、笑顔でみんな一日をすごし家に帰ることができる」ことだという。
コリーさんがこのケアファームを立ち上げたのは、2010年、農園の一角を改修してデイサービスを作った。初期投資には30~40万ユーロ(日本円で4~5千万)かけたという。ただ3分の1はヨーロッパ連合(EU)からの補助金が貰えたという。常勤職員はコリーさんはじめ3名、あと20名のボランテイアや実習生が手伝ってくれる。
デイサービスの利用料は一日60~90ユーロで利用者さんは市町村の利用資格審査を受けた上で介護チケットを持ってやってくる。ケアファームとしては年間およそ14万ユーロを市町村から受け取り、年間の利益は3~4万ユーロとのことだった。コリーさんによると「それほどの利益にはならないが、このケアファームを始めて後悔はしていない」という。
今、こうしたケアファームはケアファーム連盟によれば全オランダで1700か所あるという。そしてその質保証のための認証審査を受けているという。質認証としては感染や安全の観点から審査が行われるという。
コリーさんのデイサービスのリビングで利用者のみなさんと一緒に、手作りのゴーダチーズやジャム、菜園でとれたてのトマトやキュウリを頂いた。コーヒーの香りがやわらかな日差しの入るリビングを満たしていて、豊かなオランダの農園のケアファームを雰囲気を満喫できた研修旅行だった。