
横須賀にある衣笠病院で初診外来を週2回行っている。学生のころ、ベテラン医師が「初診の患者さんが診察室のドアを開けて入って来ただけで診断ができる疾患がある」と言うのを聞いたことがある。こうした診断のことを「スナップ診断」という。これを聞いたときには「へ~本当かな?!」と思った。
しかし最近、「スナップ診断って本当にあるんだ」と思う瞬間が増えてきた。一つはバセドー病の患者さんだ。確かに診察室に入ってきた瞬間に他の人と雰囲気が違う。若い女性で、肌がしっとりしていて、目が輝いている。心音を聞くと頻脈だ。これで「あ~!バセドーだと」と診断がつく。診断がつくまで30秒もかからない。バセドウ病がスナップ診断の代表例だろう。
それから最近、進行食道がんの患者さんもスナップ診断可能な疾患だということが分かった。問診票をちらっとみると「飲み込みが悪くなった、焼酎毎日1本」と書いてある。そして患者さんの名前を呼んで診察室に入ってくると、その雰囲気でわかる。高齢男性で顔が少し青ざめていて、ややむくんでいる。そして頸部の触診でリンパ節を触れる。それで「あっ!食道がん」と診断がつく。これも診断に30秒もかからない。その場で緊急内視鏡をオーダーすると、「進行食道がんです」と答えがかえってくる。
もう一つの例はやはり飲み込みが悪くなったと娘に連れてこられて診察室に入って来た高齢女性、一目見るとまぶたが垂れ下がっている。眼瞼下垂(図)だ。「もしや重症性筋無力症では?」と思って、隣の診察室にいた神経内科医に診てもらったところ、「その通り」とのお答え。もう半世紀以上前の医学部の神経内科の講義で聞いた症状と病名が突然、目の前に現れてびっくりした。
スナップ診断がつくことはめったにないが、ピーンと来て、心の中で指をパチンと鳴らすスナップ診断は忘れられない。
