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画像診断がすごい!


 先日の外来で、左下腹部痛のため休日の救急診療センターを受診した患者さんが、紹介状を持参で来られた。救急医から腹痛の原因について画像診断も含め精査してほしいとの紹介だ。50歳台の男性で特に既往歴もない元気な患者さんだ。

 症状も軽くなったので、このまま経過観察にしようと思ったが、紹介状の画像診断の要望があるので、念のため腹部CTを撮ることにした。するとなんと放射線医の読影の結果、腹部大動脈周囲のリンパ節腫脹がみつかった。コメントに「可溶性インターロイキン2受容体の検査を追加で」とある。この検査はリンパ腫に対して行われる検査項目だ。たしかにリンパ節腫脹には感染に対する反応性のリンパ節腫脹と腫瘍性の腫脹がある。

 インターロイキンの検査オーダーを出して、1週間後に検査結果をみた。なんと値が3桁もある。リンパ腫の疑いが濃厚だ。このため大学病院に紹介状をしたためて患者さんに持たせた。

 それにしてもCT画像診断の威力はすごい。腹部大動脈周囲といえば後腹膜の一番深いところの病変だ。これを適格に診断できるとは、すごいとしか言いようがない。

 かつて「病膏肓(やまいこうこう)に入る」と言った。膏肓(こうこう)とは心臓と横隔膜に挟まれた体の奥深い場所である。診断や治療の手の届かない奥深い場所と言う意味だ。しかしいまやCTやMRIなどの画像診断装置を用いれば、体中で手の届かないところはなくなった。これに生成AIが加われば医者の診断能は驚異的にあがるだろう。医者いらずになるかもしれない。

 ところがこうした時代にも病膏肓はまだまだある。それは脳(ブレイン)だ。精神科疾患は統合失調症のようにいまだ病気の原因が不明である疾患も多い。おそらく統合失調症には複数の因子が組み合わさっているのだろう。近年の研究では、統合失調症は、「単一の原因」ではなく、複数の遺伝・環境・脳細胞レベルの相互作用から生じる多層的な機能性疾患として捉えられている。

 こうした脳の機能性疾患にはCTもMRIもお手上げだ。21世紀は「脳科学がフロンテイアの時代」と言われて久しいが、こうした領域ではまだまだ研究者や臨床医の活躍が期待されるところが大きい。精神科疾患にはまだまだ「医者いらず」は遠い世界だ。

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