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おもしろ薬辞典⑧サントニン、ミノマイシン、レニベース


 薬には副作用がつきものだ。著者が実際に体験した薬の副作用についてお話しよう。

 著者が子供のころの1950年代は回虫症の全盛期だった。なんと畑の野菜の肥料として人糞がまだ使われていた時代だ。そこで大活躍したのがサントニンだ。サントニンは日本初の回虫駆除剤だ。1940年、日本新薬が中央アジア原産のヨモギ科植物の国内栽培に成功した。そこからサントニンを抽出して国産回虫駆除剤として製品化した。

 小学生のころこのサントニンを飲まされた。するとあら不思議、あたり一面の風景が黄色いサングラスをかけたように黄色に染まった。これはサントニンによる黄視症(xanthopsia)で、有名な副作用だ。サントニンは、網膜の視細胞に作用して色覚異常を引き起こすのだ。黄視症はジギタリスでも起きるという。画家のゴッホの黄色いひまわりはジギタリスが原因の黄視症の時に描かれたのではないかという説もある。

 サントニンの黄視症は長くは続かなかった。そのうちに見る見る黄色が薄れて青色の世界に戻ってしまった。でも子供のころ見た鮮やかな黄色い世界を今でも鮮明に覚えている。

 次に思春期になってニキビに悩まされたころ、ミノマイシンを服用したことがある。そのときもミノマイシンによる副作用の回転性めまいを経験した。最初はミノマイシンの副作用だとは気が付かず、「なんだか回りがぐるぐる回るな~」と思っていた。そのうちにめまいは消えた。あとでミノマイシンによる前庭神経への作用だと知った。ミノマイシンの服用初期に起きる副作用だ。

 つぎは降圧剤のレニベース(エナラプリル、ACE阻害剤)を服用した時の空咳だ。服用しはじめてなにか喉に引っかかる感じがしてせき込むようになった。しかしこれがレニベースの有名な副作用の空咳とは全く思わなかった。講演中になんだか喉がいがらっぽいなと言う感じがして水でのどを潤してもおさまらない。そこで主治医に聞くと、「それレニベースの空咳ですよ」と言う。「な~んだこれが空咳か」とようやく気付いた。レニベースを変えてもらった。

 薬の副作用を自分で経験するのも薬を知る上で貴重な体験といえる。

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